京都地方裁判所 昭和41年(手ワ)153号 判決 1966年7月01日
原告
田畑健吉
右訴訟代理人
佐藤満雄
被告
竹山源治
主文
被告は原告に対し金九四、七五〇円およびこれに対する昭和四一年五月七日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。
被告は原告に対し昭和四一年六月二〇日以後金一〇七、五〇〇円を支払え。
原告その余の請求を棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。
本判決第一、二項は仮りに執行できる。
事実
原告訴訟代理人は、主文第一、第二、第四項同旨および「被告は原告に対し金一〇七、五〇〇円に対する昭和四一年六月二一日から支払済まで年六分の割合による金員を払え。」との判決と仮執行の宣言を求め、その請求原因として、
「一、原告は、被告の振出した左記(1)、(2)の約束手形各一通の所持人である。
(1) 金 額 九四、七五〇円
支払期日 昭和四一年五月六日
支払地・振出地 京都市
支払場所 京都中央信用金庫十条支店
振出日 昭和四一年二月二〇日
振出人 被告
受取人、第一裏書(白地式)裏書人株式会社興和商店
(2) 金 額 一〇七、五〇〇円
支払期日 昭和四一年六月二〇日
振出日 昭和四一年二月二八日
受取人、第一裏書裏書人 田濃実
第一裏書被裏書人 原告
その他の記載(1)と同じ
二、原告は(1)の手形を支払期日に支払場所に呈示して支払を拒絶された。
三、(2)の手形は、支払期日未到来であるが、支払期日に支払場所で支払を得られないことが明らかである。
四、よつて、原告は、被告に対し、(1)の手形金九四、七五〇円およびこれに対する呈示の日の翌日である昭和四一年五月七日から支払済まで年六分の割合による遅延損害金、昭和四一年六月二〇日以後(2)の手形金一〇七、五〇〇円およびこれに対する支払期日の翌日である昭和四一年六月二一日から支払済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。」と述べた。
被告は、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。
理由
原告主張の事実は、被告において自白したものとみなす。
(一) よつて、原告の本訴請求中、(1)の手形金九四、七五〇円およびこれに対する昭和四一年五月七日から支払済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は、正当として、これを認容する。
(二) つぎに、(2)の手形の支払をなすべき日(昭和四一年六月二〇日)は、本件口頭弁論終結当時、未到来であり、原告の本訴請求中、昭和四一年六月二〇日以後(2)の手形金一〇七、五〇〇円の支払を求める部分は、将来の給付の訴であるが、予めその請求をなす必要あるものと認め、これを認容する。
手形の主たる債務者に対し手形金(手形に記載の金額)の支払を求める将来の給付の訴を認容する場合、手形金の支払を求める現在の給付の訴を認容する場合と別異に解し、支払期日以後に手形を支払のため呈示することが手形上の権利行使の要件であることを理由として、判決主文に支払期日以後手形を支払のため呈示する条件を職権で付した将来の給付判決をすべきであるとする見解(高松地方裁判所昭和三四年七月三〇日判決、下級裁判所民事裁判例集第一〇巻第七号一六一二頁)がある。しかし、いつたん適法に支払のため呈示され、手形債務者附遅滞の効果の発生した手形についても、手形の呈示証券性、受戻証券性は失われないのであるから、将来の給付判決の場合のみに、手形の呈示証券性に基づく呈示の条件を職権で付する理由はない。
(三) 口頭弁論終結当時、支払をなすべき日の未到来の手形は、支払をなすべき日以後において適法に手形を呈示して始めて、手形債務者が履行遅滞となり、遅延損害金が発生する。
したがつて、原告の本訴請求中、本件口頭弁論終結当時、支払をなすべき日の未到来の(2)の手形について、無条件に、手形金に対する支払をなすべき日の翌日である昭和四一年六月二一日から手形金支払済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は、失当として、これを棄却する。
よつて、民事訴訟法第九二条第一九六条を適用し主文のとおり判決する。(小西勝)